脚本家・倉本聰(73)の約2年ぶりの連続ドラマ「風のガーデン」が、フジテレビ系で10月9日午後10時から始まる。終末期医療と家族の絆(き ずな)を描く作品で、重要な舞台になるのが北海道・富良野に造成された約2000平方メートルの英国式ガーデンだ。夏の盛りに現地を訪ねた。(森重達裕)
8月上旬。富良野の山あいに作られた英国式ガーデンはまさに花の盛り。空の青、浮かぶ雲の白とも美しく調和し、印象派の絵画のように色彩があふれている。
「アキバの侍女でございます、ご主人様!」「女の盛りは40過ぎからよっ」「未亡人の薄化粧」――。
これらは、倉本が富良野の自宅にほど近いガーデンを毎日散歩しながら考えたオリジナル花言葉。「花を見てぱっと浮かんだ言葉」を書きとめ、その数は1年を通じて365種類に及んだ。
ドラマでは、緒形拳が演じる終末期医療の専門医・白鳥貞三が、知的障害を持つ孫の岳(神木隆之介)に、勝手な花言葉を次々に教えるシーンがある。浅野澄美プロデューサーは「すべての花言葉をドラマの中では紹介しきれないが、番組ホームページなどで公開したい」と話す。
「英国式ガーデンと人の浮世は似ている」と倉本は言う。「日本の花壇は花の咲いている時期しか見せず、枯れたらすぐ片づけちゃうけど、英国の庭は花のつぼみから枯れた後まで鑑賞させる。人間の一生を見ている気分にさせてくれる」
ドラマには四季折々の花が登場するため、昨年秋に始まったロケは1年がかり。演出は、倉本と同世代のライバル脚本家・山田太一の娘で、フジテレビ 社員の宮本理江子監督。「今年は雪が早く解けてしまい、開花予想が狂って大変だった」と語る。ふだん脚本内容を変えられることを嫌う倉本も、さすがに「花 の咲き具合によって(脚本を)変えていい」と制作スタッフにお墨付きを与えている。
「でも『花待ち』のおかげで、役者の皆さんと綿密なコミュニケーションを取ることができた」と、宮本監督はふだんのドラマ撮影ではありえない「ぜいたくな時間」を笑顔で振り返る。
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